和食の源流は日高にあり(郷土料理篇)

「かきまでごはん」は、お祝い事や行事で振る舞われてきた名物料理です。焼き魚の骨からとった出汁で季節の野菜などを煮て味付けし、炊いたご飯に混ぜ合わせます。「かきまで」は、地元の方言で「かき混ぜ」の意味です。

「茶がゆ」は和歌山県では親しみを込めて「おかいさん」と呼び、農地が少なく貴重だった米を活かす工夫として広まりました。現在でも朝食に作られることが多く、地域の方々に愛されている料理です。

「金山寺味噌」は、うり、なす、しょうがなどの野菜を大豆、麦、米の麹で仕込む伝統食品です。約1ヶ月で食べられ、1年寝かせると一層旨味が増します。保存性が高く常備菜として親しまれてきました。

「タキタキ」は日高地方衣奈地域の冬の鍋料理で、さばや豆腐、野菜を割り下で煮るすき焼き風の一品です。さば漁が盛んな10月から12月に親しまれ、現在も漁師家庭の食卓に並ぶ伝統的な家庭料理です。

「早なれ寿司」は、伝統的な保存食であるなれ寿司を手軽に楽しめるようにした郷土料理です。発酵させる代わりにお酢を使って作られることで、なれ寿司よりもクセがなく、より食べやすくした形として親しまれています。

日高地方南部では、米の代用食としてさつまいもが用いられていました。「いももち」は、さつまいもを使うことで、より少ないもち米でもちを作る知恵から生まれました。現在ではおやつとしても楽しまれています。

10月下旬頃に熊野灘へ南下するさんまを使った「さんま寿司」は、もともと、米飯や魚の保存食として作られ発展したもので、秋祭りや正月など人が集まるときに振るまうごちそうとして親しまれてきました。

春の郷土料理「豆ごはん」は、日高地方特産の「ウスイエンドウ」を使用。粒が大きく皮が薄いえんどう豆で、ほくほくした食感と上品な甘みが特徴です。温暖な気候を活かし、実えんどうの生産量は日本一を誇ります。

日高地方の方言で「ごんぱち」と呼ばれるイタドリは、春に山や河原で採れるタデ科の山菜です。3月から5月中旬に収穫し、塩漬けで保存します。煮物や炒め物に使用し、ほんのり酸味が楽しめる春の味覚です。

日高地方の冬の名物といえば「クエ料理」。和歌山県沿岸の沖合に生息しているハタ科の高級魚・クエは、水揚げが少なく「幻の魚」ともいわれます。脂がのった深みのある上品な味わいが特徴です。

温暖で潮通しの良い紀伊水道で育まれた「伊勢エビ」は、身が大きくぷりぷりした食感が特徴です 。10月から4月の漁期には、獲れたての伊勢エビづくしの料理が旅館やホテルなどで楽しめます。

和歌山県の山間部では猪や鹿が多く生息しており、日高地方でも昔から猟師たちによって捕獲され食べられてきました。しし汁は、豚汁の豚肉の代わりに猪肉を使った料理で、昔から地域で食べられています。

日高地方では、わさびの栽培が盛んで、その葉は塩漬けにして食べられていました。「わさび寿司」はわさびの葉でくるんで作ったお寿司です。パリッとした葉の歯ごたえ、甘酸っぱいさば、わさびのさわやかな風味が味わえます。